○7月26日(月)〜30日(金) 【南アルプス聖岳,赤石岳,荒川岳】 2名

  【第1日】 沼平 (0:40) 畑薙大吊り橋 (1:25) ウソッコ沢小屋 (1:30) 横窪沢小屋
  【第2日】 横窪沢小屋 (2:05) 茶臼小屋 (0:30) 茶臼岳 (1:30) 上河内岳登り口=上河内岳 (往復0:20) (2:00) 聖平小屋  
  【第3日】 聖平小屋 (1:15) 小聖岳 (1:10) 聖岳=奥聖岳 (往復0:30) (2:00) 兎岳 (1:40) 中盛丸山 (0:30) 大沢岳 (0:45) 百間洞山の家
  【第4日】 百間洞山の家 (0:55) 百間平 (1:45) 赤石岳 (0:20) 小赤石岳 (0:50) 大聖寺平 (0:30) 荒川小屋 (1:35) 荒川岳コル=荒川前岳 (往復0:10) (0:05) 荒川中岳 (0:05) 中岳避難小屋
  【第5日】 中岳避難小屋 (0:50) 東岳(悪沢岳) (0:50) 千枚岳 (0:20) 千枚小屋 (3:55) 椹島

 あこがれの南アルプスへ初挑戦,5泊6日の予定での山行。
 前日,九州の南に熱帯低気圧が発生した。進路は西寄りだったが,南から湿った空気を連れてくると離れた地域でも大雨になることがある。出発を遅らせようとも思ったが,遅らせても天気がよいとの保証もないため,そのまま出発することにした。

 

【第1日】
 早朝,自宅をマイカーで出発し,安倍川(あべかわ)沿いを山道に入っていく。天気は晴天に恵まれ,途中の富士見峠(ふじみとうげ)では南アルプス深南部(しんなんぶ)の大無間山(だいむげんざん),小無間山(しょうむげんざん)や朝日岳(あさひだけ)がくっきり望める。
 井川ダム(いかわ−)を過ぎ,自宅から3時間ほどで畑薙第1ダム(はたなぎ−)に到着。登山計画書を提出してさらに林道を沼平(ぬまだいら:950m)まで進める。ここから先は一般車の乗り入れが規制されており,通常はゲートが降ろされているが,シーズン中の日中は業務用車両が通過しやすいように管理人がロープで通せんぼをしている。
 ここの空き地に駐車していざ出発。(9:00発) 林道を40分ほど行くと左手に大きな吊り橋が見えてくる。畑薙大吊り橋だ。畑薙湖にかかる長さ182mの吊り橋は東洋一ともいわれるほど圧巻。しかし幅は1m足らずで,しかも歩く所は幅40cmにも満たない板1枚だけ。数10cm間隔で横に桟が入っているので踏み外しても落ちることはないが,足下をずっと見つめながら歩いていると,めまいを覚えるような感じに襲われた。
 吊り橋を渡るといきなり急な登り。樹林の中をジグザクに登って行く。途中茶臼岳(ちゃうすだけ)への直登コースで今は廃道となった鳥小屋尾根(とりごやおね)への道を左に見送ると,山の急な斜面を巻く(=迂回する)ような道となり,しばらくするとベンチのある尾根に出る。ヤレヤレ峠(1,081m)だ。ここからは山腹を斜めに下の上河内沢(かみこうちざわ)に下っていく。下りた所には水場があり,冷たい湧水で手をすすぎ口に含む。うまい。
 道はここから沢沿いの広葉樹林の中を進んでいく。勾配はさほど急ではない。途中3箇所の吊り橋があり,川の左岸,右岸へと渡り返す。3つ目の吊り橋を過ぎたあたりから勾配がやや急になってきて,薄暗い山の斜面に設けられた4つ目の吊り橋を渡ると,目の前に階段状の鉄ばしごが現れる。それを登り切って少し行くと,ウソッコ沢小屋(1,175m)に到着した。小屋は無人で扉は閉まっている。真夏の太陽が照りつけているため,小屋の前の木陰で昼食をとることにする。
 小屋を出ると一旦沢まで下る。右手には小さな滝が水しぶきをあげており,その前の吊り橋を渡ると,急な山の斜面をジグザグに,次に赤茶色の傾きかけた鉄製の階段を登っていく。そして鞍部(あんぶ=尾根のくぼんでいる所=コル)のような場所を通ると,いよいよ本コース一の急勾配箇所にさしかかる。1,040/1,000(10m進むと10.4m登る)という驚異の急斜面だ。富士山の急なところでも800/1,000程度なので,いかに急な斜面かがわかる。その斜面につけられたジグザグの道を一歩一歩ゆっくりと登っていく。林の中で展望はないが,砂混じりの土の道なので歩きにくいことはない。
 登る途中,ところどころで下ってくるパーティと出会う。どの組も今日が最終日だ。その都度足を止めて,登山道の状態などの情報を交換しあった。
 小屋を出て50分ほどで勾配が緩やかになる中の段(なかのだん:1,460m)に着き,一息入れる。ここからは多少緩やかになるもののきつい登りが続く。道が尾根からはずれ岩が多くなってくると,勾配も緩やかになりやがて横窪峠(よこくぼとうげ:1,635m)が見えてくる。峠からは5分ほど沢へ下り,橋を渡るとすぐに本日の宿泊地となる横窪沢小屋(よこくぼざわごや:1,612m)に到着した。小屋の裏手では,後ろに反り返ったオレンジ色した花びらのクルマユリが私たちを出迎えてくれた。(13:20着)
 小屋は井川山岳会が運営しており,1泊2食寝具付で7,500円。建物は2階建で,東側半分が宿泊場所になっている。湧き水は豊富で,別棟にはシャワー設備もある。(1回50円,ただし冷水) 洗い場も設けられており,早速,顔を洗って1本400円の缶ビールで乾杯した。
 当日の宿泊は20人程度。中には南アルプス北部の北岳(きただけ)から6泊かけて南端の光岳(てかりだけ)まで縦走してきた若者もいて,その健脚ぶりに驚かされた。
 お待ちかねの夕食は5時半から。小屋の主人がその日たまたま近くで釣ったイワナを,小屋の周りに生えているフキの葉とともにフライにして出してくれた。本日限定の特別メニュー。宿泊者が少なくて良かった。(大勢だったら別のメニューになっていた。) 他にも佃煮やサラダが給食で使うような四角い皿に一緒に盛りつけられ,ご飯はおかわり自由,豆腐のみそ汁もついて,とても山小屋とは思えない豪華な夕食に,2本目のビールを飲みながら舌鼓を打った。翌日の支度を整えて,19時30分就寝。
 [(当日累積標高差) +807m −145m]

 

【第2日】
 4時起床。ストレッチをして4時半朝食。天気はさほど良くない。山には雲がかかっている。身支度を整えて出発。(5:40発)
 小屋の裏手からいきなり急な登りとなる。昨日ほどではないが,朝一番にしてこの登りはきつい。今日の最初の目的地,茶臼岳(ちゃうすだけ)までは標高差にして1,000m,4時間近い行程である。道は広葉樹林の尾根道で展望はないが,時折木立の間から見える山々には雲がかかっている。
 小屋から1時間,明るい尾根に出た所で休憩をとる。まだまだきつい登りが続く。水場の脇を通り,樺段(かんばのだん)を過ぎる頃には勾配も緩やかになり,道が尾根から外れて左に巻くようになる。そのうち雨が降り出し,あわてて雨具をつける。樹木も背が低くなり,やがて左手が開けてくると,まもなく左上に霧にかすんだ小屋が見えてきた。茶臼小屋(ちゃうすごや:2,406m)だ。
 雨風が強いので小屋の入口で休憩させてもらうことにする。小屋の周りにはクルマユリをはじめ,ピンクの花びらをBSアンテナのように広げたハクサンフウロ,ヒマワリをうんと小さくしたような黄色いウサギギク,長く伸びた茎の先に黒ずんだ植木鉢(総苞:そうほう=花の付け根の部分),そこから黄色い花びらがだらしなく広がっているマルバダケブキ,黄色いお茶碗のような形で光沢のあるミヤマキンポウゲなど,色とりどりの高山植物が咲き誇り,さしずめお花畑のようだ。
 ここから先は稜線歩きのため,小屋横の水場で水を補給して出発。岩がゴロゴロした道を登っていくと,10分ほどで稜線上に到着。ここから茶臼岳を往復する。通常ならメインザックは残し,貴重品と雨具などをサブザックに入れて行くのだが,全て背負ったまま往復することにする。
 ところどころハイマツが覆っただけの砂利の道,風雨が強く飛ばされそうだ。景色も全く見えない。ハイマツの間から白いハクサンシャクナゲが顔を出している。途中から大きな岩がゴロゴロした道に変わり,分岐から20分ほどで茶臼岳(2,604m)の山頂に到着した。山頂には既に数組のパーティがいた。このまま南へ下ると光岳(てかりだけ)に行く道だ。
 写真を撮り,少し下った岩陰で軽食をとって出発。稜線を北に来た道を戻っていくと,道は尾根から外れ砂礫(されき=砂と小石が混ざったもの)の斜面を斜めに下るようになる。向こうから大きなザックを背負った若者のパーティが登ってくる。大学のサークルらしい。女性も何人かいるが,皆しっかりした足取りをしている。とても頼もしく思えた。
 結局4組の学生とすれ違い,灌木(かんぼく=背の低い木)の間を抜けしばらく行くと,目の前に広大な窪地が広がってきた。国土地理院発行の2万5千分の1地形図に唯一「御花畑」と記されている場所だ。昔はその名の通りお花畑だったようだが,最近は花の数がめっきり少なくなってしまっている。天気は相変わらず風が強く,雨が降ったりやんだりだ。
 お花畑を過ぎると道は登りに変わる。周囲にはハイマツが生い茂り,その間にハクサンシャクナゲが白い花をのぞかせている。途中,褶曲模様(しゅうきょくもよう=地層が波状に曲げられてできた模様)が美しい大きな岩がそそり立つ竹内門(たけうちもん)を通り,比較的勾配のきつい稜線を登っていくと,上河内岳(かみこうちだけ)の肩の部分に到着した。ここから山頂へは往復20分。貴重品などをサブザックに詰めて山頂へ向かった。富士山のように急な砂礫の斜面をジグザクに登っていく。10分ほどで到着した上河内岳(2,803m)の山頂からは,天気が良ければすばらしい富士山が望めるところだが,景色は全て霧の中。写真を撮っただけで早々に下山する。
 肩の部分からは二重稜線の谷間の部分を下っていき,そのうち西側(左側)の稜線に移る。途中で2羽のライチョウを見つけた。急いでカメラを出して写真を撮る。ライチョウが現れると雨になるそうだ。道は再び登りになり,しばらく行くと痩せた尾根に出た。東西とも急斜面となっており,道は東側(右側)を巻いている。よく見ると道の両側にピンク色したキクラゲのようなタカネシオガマ,紫色の兜の形をしたトリカブトの仲間,キタザワブシ,他にもウサギギク,ハクサンフウロなどの高山植物が咲いている。このような斜面の岩陰にも美しい花が咲くんだなと感心した。
 ここから先はひたすら下りの道。途中まで西側(左側)は上河内ガレ(かみこうち−)と呼ばれるガレ場(山の斜面が崩れて岩石がゴロゴロしている所)のため,足下に注意しながら下っていく。雨もようやくあがり,時折霧が晴れて下の方の景色が見えるようになってきた。その瞬間をカメラに収めようとしばらくの間,休憩をとった。が,なかなかその機会は巡ってこない。あきらめてまた歩き出す。しばらく下ると道は樹林帯に入り,木の根と土で滑りやすい道を下っていくと,やがて広々とした聖平(ひじりだいら)に到着した。本日の宿泊地,聖平小屋までは木道を数分の距離だ。見回すと周囲には立ち枯れした木が目立つ。霧が晴れてきて前方の聖岳(ひじりだけ)が見えそうになる。カメラを構えてその瞬間をねらっていると,一瞬だけ山頂付近が顔を出した。すかさずシャッターを切る。
(13:00着)
 聖平小屋(2,265m)は2階建で,運営や料金は横窪沢と同じ。ただ食事や対応はあまり良くないとの話を耳にしていた。案の定,受付を済ませ雨具などを外に干して宿泊室に入ると,いきなり奥から詰めてくれと言われる。まだ人数が少ないうちから,1間ほどの間に7人入るからと言われ,閉口した。混んできたら詰めますと言って6人ずつにしてもらったが,結局,2階は余裕があるのに1階だけぎゅうぎゅう詰めという状態だった。しかもトイレは200m近く離れている。唯一の楽しみの夕食も冷凍ハンバーグとちょっとした総菜だけ。ご飯もおかわりなしでがっかりした。(夕食16:30)
 この小屋は4方向からの合流点に位置し,どの方向へも次の山小屋まで丸1日の道のりとなるので,スルーすることは不可能であり,まして最近人気が高い聖岳へ登るには必ず利用しなければならない。そのため近年利用者が急増し,その対応としてこういった方法を採らざるを得ないといった事情もありそうだ。
 夕方のラジオによると九州,四国で大雨になっているとのこと。やはり台風の影響か。早く太平洋高気圧が強くなってくれればと思いながら,その夜は結局ビールも飲まず,18時30分に就寝した。
 [累積標高差(当日) +1,440m −802m (累計) +2,247m −947m]

 

【第3日】
 夜半過ぎは雷鳴がとどろいていた。3時半起床。4時半朝食。小屋の主人がラジオの気象通報を聴いて作成した天気図が入口に掲示してある。さすが山男と感心しながら見ると,いまいち太平洋高気圧の勢力が弱い。心配したとおり台風の影響で南から湿った空気が流れ込んでいるようだ。雨は上がっているが,山は霧。雨具を着て出発する。(5:30発)
 聖平に戻り北に進路を取る。滑りやすい土の急登だが,周囲はマルバダケブキ,ウサギギク,たいまつのように黒い花の先端に黄色い花びらがわずかに顔を出しているタカネコウリンカなどの高山植物でいっぱいだ。
 20分ほどで便ガ島(たよりがしま),易老渡(いろうど)方面へ下る薊畑(あざみばた:2,400m)分岐に到着。見ると道端に数個のザックが置いてある。ここからサブザックで聖岳(ひじりだけ)を往復する人がいるようだ。ザックのベルトを調整し直して,さらに灌木の中を登っていく。目の前が開けハイマツ帯に変わると,道も砂混じりになる。勾配も一旦緩やかになるが,西側(左側)がガレてくると再び急な登りになった。天気は相変わらず霧,時折霧雨混じりだ。
 小屋から1時間15分ほどでひとつのピーク,小聖岳(こひじりだけ:2,662m)に到着。小休憩をとり再び聖岳を目指す。道は緩やかなアップダウンを繰り返す痩せた尾根道で,西側(左側)がガレているので,スリップに要注意だ。
 そのうち聖岳本体の大斜面が目の前に現れてくる。登り口にはラッパ形のチシマギキョウが紫色の可憐な花を咲かせていた。1/3ほどハイマツが覆い,残りは岩と砂礫の斜面にジグザグにつけられた道。勾配は640/1000と富士山ほどではないが,標高差が350mもあり,とてもきつい登りだ。上から下ってくるパーティが「下りもきついよ」と言って通り過ぎていく。この日は雨で濡れていたためそれほどでもなかったが,乾いていれば砂礫に足が埋もれ,とても歩きにくい道だ。この斜面を1時間ほどかけて登り切ると,目指す聖岳の山頂(前聖岳:3,013m)に到着した。富士山以外で初の3,000m峰登頂だ。
 山頂はあいにくの霧雨で風も強く,景色どころではない。新しく建てられた四角柱の形をした木製の山名標識をバックに写真を撮り,サブザックを持って奥聖岳(おくひじりだけ)を往復することにした。
 東西に細長い山頂を東に向け進む。アップダウンはほとんどないが,大きな岩がひしめく岩稜帯の尾根で,北側(左側)はガレ場,南側もハイマツの急斜面が続いているので,赤ペンキ印をたどって慎重に足を運ぶ。
 そのうち高山植物が咲き乱れる開けた平地に出た。白い花びらで中央が黄色いハクサンイチゲ,筒状に丸めた赤い紙の片端にたくさんの切り込みを入れた形のコイワカガミ,白っぽい葉が矢筈(やはず=矢の弦をつがえる所)に似ているタカネヤハズハハコ(つぼみ)などが一面に広がっている。花の写真を撮りながら少し登ったところが奥聖岳(2,978m)だ。特に標識はなく,岩に赤ペンキで「奥聖」と書かれてある。山頂から東側は急な斜面になっているが,ここから東へ続く尾根が積雪期の登山ルートとなっている。
 奥聖岳から戻ると3〜4組のパーティが来ていた。「奥聖の方は花がきれいでしたよ」と声を掛ける。2人で写真を撮ってもらい,カロリー補給をした後,下山を開始した。はじめは砂礫の急な下り。そのうち聖の大崩壊地(ひじりの−)と呼ばれるガレ場が南側(左側)に現れ,ハイマツ帯との縁を下る道となる。灌木帯を通り,赤紫色した岩石の多い急斜面を下り,いくつかの小さなピークの北側(右側)を巻き,ガレ縁の足場の悪い所を注意しながら通過する。反対側から登ってくる何組かのパーティとすれ違う。足場の悪い登りはきつそうだ。
 ハイマツ帯に入ると土の滑りやすい道となり,ところどころに白い花をつけているハクサンシャクナゲを見ながら,アップダウンを繰り返すと,やがて岩の多い砂礫の登りとなる。一旦勾配も緩やかになり,左に朽ち果てた避難小屋を見送ると,また急な砂礫の道。登り切ると兎岳(うさぎだけ:
2,818m)山頂だ。
 この山は南西に細長く,三角点はここから南西へ200m先に位置している。足下の岩場には南アルプスと白山でしか見られないタカネビランジがピンクの可憐な花を咲かせはじめていた。まだほとんどがつぼみだ。雨はちょうどやんでいるが,風が強い。晴れていれば赤石岳の勇姿が望めるはずの方向も白いカーテンを降ろしたように真っ白だ。しかたなく聖岳と同じ真新しい標識の前で写真を撮り,山頂の風下側で昼食をとることにした。昨日は雨のためコンロを使わず軽食で済ませたが,やはり温かい飲み物が一番いい。スープやみそ汁で体を温め,久しぶりのまともな?!昼食で胃袋を充たした。
 50分ほどの休憩後,兎岳を北に下山する。砂礫の見晴らしのいい急斜面をジグザクに150mほど一気に下ると鞍部に出て,再び緩やかに登り返す。一つ目のなだらかなピークを過ぎ,2つ目のピークが小兎岳(こうさぎだけ:2,738m)だ。あいにくここでも遠くの景色は霧の中。ここから尾根の東側(右側)を巻くように斜めに下っていく。道沿いには花が終わった後のチングルマが印象的な姿を見せている。この花は当初ねじれた束になっている雌しべが,受粉後花びらが散ると,細かい毛が生えてバラけて長くなり,風になびくような姿で種子を飛ばすという変わった花だ。
 下りきるとまた鞍部。この先の山はちょうど地形図どうしの境目でとても見にくいが,地図で見る限り名前の通り丸く盛り上がった形の中盛丸山(なかもりまるやま)のはずだ。
 そのうちだんだん霧が晴れて山の形が見えてきた。予想以上にニョッキリとした形の山だ。近づくにつれその傾斜のきつさが見えてくる。最初は比較的緩やかな山の西側(左側)を巻くように登ると思っていたが,なんと真正面の岩場に赤いペンキの印が着いている。えっあそこを登るの,と驚愕した。標高差は100mほど。下から見上げるとその中段から上は直立に近い岩場だ。鎖やロープはない。しかも時折突風混じりの強風が吹いている。ザックをしっかり固定し直し,風にあおられそうなザックカバーを外してストックをしまい,慎重に手足で足場を確認しながら登り切った。地に足が着いていれば相当高い所も大丈夫なはずの私も,予想外の岩場と強風により,久しぶりに怖い思いをした。
 やっとの思いで到達した中盛丸山の山頂(2,807m)はこじんまりしており,標識などはなかった。ガイドブックを見てもそのような岩場があるとは一言も触れてないじゃないか,とブヅフツ言いながら15分ほど休んだ後,次のピーク,大沢岳(おおさわだけ)に向かった。
 下り(北側)は砂礫の急斜面のジグザグ道で,心配した岩場はなかった。一気に100mほど下って少し登り返すと,沢沿いに今日の宿泊地,百間洞山の家(ひゃっけんぼらやまのいえ)へ行く道が右手に分岐している。この小屋は7年前に今の場所に新築されるまでは,20分ほど沢に下った場所に建っていた。その時の道が今の小屋への近道として利用されている。私たちは,今回大沢岳を通る尾根コースを進んで小屋へ向かうことで計画した。地図によると,どちらも所要1時間とある。しかし道標によると沢コースは所要45分。結局まだ時間も早いので,予定どおり尾根コースを行くことにした。
 大沢岳への登りはそれほど急ではない。標高差も120mほどだ。道は石がゴロゴロしており,次第にそれが大きくなってくる。途中,大沢渡(おおさわど),しらびそ峠への道を西(左)に見送り,大きな岩の上を渡り歩いていくと,大沢岳の山頂(2,819m)に到着した。
 痩せた岩場で何の変哲もない山頂では写真を撮っただけで早々に下山。西側(左側)がガレた岩場の稜線を足下に注意しながら下ると,百間洞(ひゃっけんぼら)を見下ろす斜面の頂に出た。真下に色とりどりのテントが小さく見える。時折霧が晴れて,向こうに百間平(ひゃっけんだいら)が平たい枕のような形を見せている。
 ここからの下りは640/1000と聖岳の登りと同じ急勾配。標高差も300m近い。斜面は30cm〜1mほどの岩が積み重ねられたようになっており,その7割ほどをハイマツが覆っている。道はハイマツを縫うようにジグザグにつけられており,岩の上を渡り歩くように下っていく。途中で靴下がずれたため,一旦休憩して履き直す。そのまま歩き続けるとマメができてしまうので,足のケアはすぐに行った方がよい。
 山頂から40分ほど下ると,やっと灌木帯の道になり,やがて本日の宿,百間洞山の家(2,515m)に到着した。(15:15着)
 この小屋は(株)東海フォレストが運営しており,1泊2食寝具付で7,500円。建物は3階建。斜面に建っているので2階が受付兼食堂,宿泊室は3階で,外階段から出入りする。中は2段構造になっており,それぞれが部屋のように小さく区切られていて,屋根裏部屋もある。私たちは定員4名の2段目の部屋を割り当てられた。この部屋は一段高い奥にもう4人分のスペースがある。混んでくるとそこまで埋まってくるというわけだ。この日はそこまで混まなかったので,そのまま私たち2人でこのスペースを使うことができた。いきなり詰めさせられるどこかの小屋と違って,やはり評判がいいだけあって対応がいい。
 1階は炊事場,トイレと発電機室。トイレも流水式,トイレットペーパー常備でとても快適。食堂も利用者に開放され,応対もとても親切だった。また,ここの領収証を持っていけば,帰りの椹島〜畑薙ダム間の無料送迎バスに乗ることができる。
 早速缶ビールと思い受付へ。残念ながら利用者が多すぎて,缶ビールは1人1本までとのこと。それではとロング缶(1,000円)に変更して食堂で乾杯した。記録の整理をしながらも時間を持て余し,さらに缶チューハイ(600円)を買って胃袋に流し込み,17時からの夕食時にも日本酒(600円)を1合飲み,いい気持ちになった。
 夕食はトンカツがメインディッシュ。他にも生野菜や総菜などがついて,ご飯も山盛り2杯を平らげた。19時00分就寝。
 [累積標高差(当日) +1,481m −1,216m (累計) +3,728m −2,163m]

 

【第4日】
 3時半起床。4時半朝食。雨は降っていないが山は雲の中。3日連続の雨具着用となる。出発前,小屋前で記念撮影。(5:50発)
 昨日下った道を少し戻り,東へ進路を変えて反対側の斜面の道へ取りつく。しばらくすると灌木を抜け,石のゴロゴロした登りとなる。勾配は520/1,000。こぶし大〜50cm位の石の上のジグザグ道をゆっくりと登っていく。登るにつれ小屋がだんだん小さくなっていく。昨日下ってきた大沢岳の斜面を6人ほどのパーティが登っていくのが見える。
 道は次第に緩やかになり,平坦になる頃,広大な百間平(ひゃっけんだいら:2,765m)に到着した。ここは視界が悪いときなど道に迷いやすい所だ。見るとあちらこちらに迷路のように道が枝分かれしている。しかし本ルートには緑色のペンキで印が付けられているので,見落とさずに進めば通常迷うことはない。
 百間平からはしばらくの間,なだらかな稜線歩きが続く。北西側はガレているが,足場は悪くない。時たま雲が消えて山々が顔を出す。正面の赤石岳(あかいしだけ)はなかなか現さなかったが,その向こうに見える荒川三山(あらかわさんざん)ははっきりと見ることができた。
 途中岩場の多いところを抜けると,いよいよ正面に赤石岳が立ちはだかるように迫ってくる。さぁ赤石岳本体への登りだ。道は最初南側(右側)を巻くように山腹を斜めにつけられている。50cm前後の岩を敷きつめたような山肌を,海岸の岩場でも歩くような感じで登っていく。100mも登ると一旦尾根状の場所に出る。ここから残り200m,560/1,000砂礫の斜面の急登だ。ジグザグにゆっくりと登っていく。斜面を登りきり,狭い尾根のような岩稜帯を通過し,少し下って登り返すと,百間平から約2時間,日本で一番高い所にある一等三角点である赤石岳の山頂(3,120m)に到着した。(富士山の剣ヶ峰は二等三角点)
 残念ながら景色は霧の中で,近くに見えるはずの避難小屋さえも見ることができなかったが,山頂から稜線にかけてはミヤマシオガマ,チシマギキョウ,チングルマ,タカネヤハズハハコ,ミヤマキンポウゲに似ているが葉が大きい一枚物のミヤマダイコンソウ,細長い白い花びらが10枚あるように見えるイワツメクサ(実際は5枚)などの高山植物があちこちに美しい花を咲かせていた。
 山頂には他にも十数人がいる。岩陰で昼食をとりながら,雲が晴れるのに一縷の望みをかけて1時間ほど休憩をとったが,結局晴れることはなく,逆に雨が降ってくるという最悪の状態に,あわてて支度を整え下山を開始した。
 山頂から北へ砂混じりの岩場の急な道を100mほど下っていくと,岩稜帯のゆるやかな痩せた尾根道となり,赤石小屋(あかいしごや)への道を東(右)に見送ると,多少のアップダウンを経て,小赤石岳(こあかいしだけ:3,081m)に到着した。ここからさらに緩やかな下りの尾根を進み,尾根のはずれの所から,道は北西(左)に進路を変えて,砂礫の急斜面をジグザグに下るようになる。時折霧が晴れると,真下に大聖寺平(だいしょうじだいら)という広大な台地が顔を見せる。
 急斜面を150mほど下ったところがダマシ平(−だいら)と呼ばれる平坦地。大聖寺平は次の斜面をさらに100mほど下ったところだ。霧が晴れそうになり,カメラを構えての小休止が多くなる。きりがないとあきらめて,一気に大聖寺平(2,720m)まで下り,写真を撮って荒川小屋(あらかわごや)へ道を進めた。
 大聖寺平を過ぎると道は稜線を外れ,東側(右側)の山腹を巻くようになる。小石やハイマツの斜面をやや下り気味に進んでいくと,やがて樹林帯に入り,滑りやすい土の道を下ると目の前に荒川小屋が姿を現した。小屋の周囲には,ハクサンフウロ,ミヤマキンポウゲ,ハクサンフウロより色が濃くうつむき加減のタカネグンナイフウロなどがカラフルな花を咲かせている。
 当初,ここで4泊目とする計画だったが,もともと4日目の行程には余裕があり,実際まだ正午前であること。また,このまま次の小屋まで足を延ばせば,5日目に帰宅できることから,本日の宿泊場所は荒川中岳(あらかわなかだけ)の避難小屋に変更することにした。
 荒川小屋を出発して灌木の中を登っていく。途中から山腹を巻くような道に変わり,灌木を抜けてハイマツ帯に入る。道の両側にはところどころ高山植物が咲いている。道沿いの水場で水を補給してさらに行くと,次第に傾斜が急になり,一旦尾根状の場所に出る。ここからは勾配800/1,000という急勾配のカール状の斜面(カール=氷河の浸食作用で山頂付近にできた半円形の窪地=圏谷)を登っていくが,ここが南アルプス最大のお花畑といわれる場所だ。ハクサンフウロ,ミヤマキンポウゲ,タカネグンナイフウロなどの他に,白い花びらの間に緑色のガクが見えるタカネツメクサ,高山のタンポポ,シロウマタンポポ,キャベツのように重なった薄い色の葉の真ん中に黄色い綿のような花を咲かせたイワベンケイ,白い細かい花を傘のように広げたミヤマシシウド,ミヤマゼンコ,白い小さい無数の花が虎の尾のような形をしたイブキトラノオ,昔の糸巻きの形をした紫色のミヤマオダマキなど,ジグザグにつけられた道の周囲に広がる砂礫の斜面は緑に覆われ,その中に無数の高山植物がいっぱいに花を咲かせ,とてもすばらしい。日が射していないのが残念だったが,それでも様々の花の美しさを堪能し,カメラに収めることができた。上から下ってくるパーティもみな口々に「すばらしい」を連発している。また,普通ならきつい登りもじっくりと時間をかけたため,難なく通過することができた。
 お花畑を過ぎて尾根状の場所に出ると,道はさらに斜面を斜めに登っていく。小屋から1時間半ほどで荒川岳(あらかわだけ)の鞍部に到達した。にわかに霧雨混じりとなり,手早くサブザックを担いで鞍部を南西(左)へ,荒川三山の一峰,前岳(まえだけ)を往復する。前岳の山頂(3,068m)へは緩やかな登りで5分ほど。そのすぐ先は荒川大崩壊地と呼ばれる大きなガレ場となっており,ロープが張られている。
 写真を撮ってすぐ引き返し,鞍部から逆に北東方向へ5分ほど緩やかに岩場の道を登っていくと,荒川三山の中央に位置する中岳の山頂(3,083m)に到着した。そこから5分も下らないところに中岳避難小屋が建っている。小屋の近くには褐色で小さいクロユリが咲いていた。(14:25着)
 この小屋は(株)東海フォレストが運営しており,素泊まりのみだが1泊寝具付で4,500円。建物は三角屋根の1階建で内部は2階構造になっており,はしごを上った2階が寝室だ。水はないがビールや酒,カレーライスやカップヌードルは売ってくれる。電気はソーラー。照明は天井からぶら下がっている小さい豆電球だ。寒いときは石油ストーブもつけてくれる。管理人のおじさんはとても気さくで,いろいろ楽しい話を聞かせてくれた。
 とりあえずビールで乾杯し,夕食は持ってきたカップヌードルやビスケットなど。食事付の小屋のように豪華ではないが,十分カロリーは補給できる。
 日没時には時折晴れる雲の彼方に見える富士山を狙ってシャッターチャンスをうかがった。何枚か撮ることができたが,あまりの寒さのため,早々に小屋に引き上げた。
 当日の小屋泊まりは,私たちともう一人の若者だけ。いろいろな山の情報を交換しながら,天気予報を確認して,明日の身支度を済ませておく。天気は回復しそうだ。明日は14時の送迎バスに乗らなければならないため,出発は4時30分。19時00分就寝。
 [累積標高差(当日) +1,137m −569m (累計) +4,865m −2,732m]

 

【第5日】
 夜中はだいぶ寒く,他の毛布まで借りてくるまった。強風で風切り音も耳につく。3時起床。窓からは星空が見える。快晴だ。最終日にしてようやく天気に恵まれた。ここは山頂。朝焼けの山々が望める,と期待に胸が膨らむ。小屋の正面に見える雄大な東岳(ひがしだけ=悪沢岳:わるさわだけ)の上にはオリオン座が輝いている。3時半朝食。親父さんも起きてくれて,灯りとストーブをつけてくれた。温かいみそ汁とカロリーメイトで朝食を済ませ,身支度を整える。結局風が冷たいので防寒用に雨具を着ることにする。これで4日間とも雨具着用だ。(4:30発)
 東岳に向かって小石の多い急斜面を下っていく。100mほど下ると鞍部に出て,痩せた尾根の岩稜帯を進むと,いよいよ東岳の登りとなる。北側(左側)がガレた砂混じりの岩場の斜面をジグザグに登っていく。風も強く勾配も急なため,足下に注意しながらゆっくりと登っていく。途中で日の出となり南側(左手斜め後ろ)に見える赤石岳(あかいしだけ)が赤く染まる。また,東岳の影が後ろの中岳(なかだけ)に映ってきた。道の周囲にもチシマギキョウやミヤマオダマキなどが花をつけている。
 小屋を出て50分ほどで日本第6位,今回山行の最高峰,東岳山頂(3,141m)に到着した。大きな岩を積み上げたような山頂には,聖岳(ひじりだけ)と同じ真新しい標識が朝日を受けて輝いていた。山頂は風が強く寒かったが,それを忘れさせるほど雄大で,すばらしい景色が360°広がっている。富士山も美しいシルエットを見せ,遠く北アルプスも全山きれいに見える。南アルプスも甲斐駒ヶ岳(かいこまがたけ)から仙丈ヶ岳(せんじょうがたけ),間ノ岳(あいのだけ),塩見岳(しおみだけ)とそれに続く尾根。南に向ければ朝日で赤く化粧した赤石岳。位置的に見えない北岳(きただけ)と聖岳を除き,ほぼ全山が手に取るように望めた。いつまで見ても飽きない眺望を堪能し,1時間近く写真を撮りまくった後,千枚小屋(せんまいごや)から登山者が登ってくるのにあわせて,下山を開始した。
 巨大な岩が折り重なるように続く稜線を巻くように東に向かって下り,徐々に高度を下げていく。100mほど下ると岩稜帯を抜け,一転してなだらかな山容の丸山(まるやま:3,032m)に着く。ここからハイマツの斜面を緩やかに下っていくと,いきなり南側(右側)にガレ場が現れ,痩せた尾根道となる。道端には細長い茎の先に薄紫色の不揃いな花びらをたくさんならべた風車のようなタカネマツムシソウや高山に生えるタカネナデシコ,一本の棒にいくつものクリーム色した靴下を干したようなイワオウギが咲いている。反対から次々とパーティが登ってくる。足下に注意しながら急な岩場を登り返してガレ縁を南側(左側)に巻き,再び灌木の中の痩せた尾根の岩場を登り切ると,東側(正面)が緩やかに開けた千枚岳(せんまいだけ:2,880m)の山頂に到着した。ここまでくると赤石岳の左手に聖岳が顔を見せる。今回始めてみる勇姿だ。
 千枚岳からは一気の下り。しばらく行くと灌木帯に入り,道が土で滑りやすくなってくる。途中,二軒小屋(にけんごや)への道を北東(左)に見送り,斜面を斜めに下っていくと,まもなく千枚小屋
(2,610m)の前に出た。小屋の周りはクルマユリ,ハクサンフウロ,ミヤマキンポウゲ,タカネグンナイフウロ,マルバダケブキ,ミヤマシシウド,ヨツバシオガマ,イブキトラノオに加え,線香花火が光る瞬間のような黄色い花のオタカラコウ,橙色の重なり合った5枚のガクが花びらのように見えるシナノキンバイなどの高山植物でいっぱいだ。また南東の方には,双耳峰(そうじほう=頂上を二つもった山)の笊ヶ岳(ざるがたけ)の姿が印象的に見える。
 ここからは,行程8.5km,標高差1,500m,所要5時間の下り。靴ひもをしっかり締め直し,カロリーを補給して出発。小屋の下,沢の北側を巻くように下り,沢を挟んで反対側,小屋の東側の尾根に乗る。針葉樹林の中を緩やかに下っていくと,東側(左側)に駒鳥池(こまどりいけ)の標識がある。少し分け入ってのぞくと,薄暗い森の中に小さい池が見えた。さらに林の中を緩やかに進む。ところどころ木の根や土で滑りやすい。1時間ほど下ったところで椹島(さわらじま)からの先発組と出会う。
 このまま単調な道をどんどん下っていく。途中,蕨段(わらびのだん)と呼ばれる湿地を過ぎ,少し行くと勾配が急になってくる。随所で登ってくるパーティとすれ違う。木の間をジグザグに斜面を下ると清水平(しみずだいら)と呼ばれる水場に出る。久しぶりの湧水に顔を洗い口に含む。
 ここからは尾根の西側(右側)斜面を巻くように斜めに下る道。勾配はだいぶ緩やかだ。ぐんぐん下っていき,一旦林道を横切ると尾根の道となる。そのまま緩やかに下っていくと,小石下(こいしした)という小高い場所に飛び出す。振り返ると荒川三山がその勇姿を見せている。道は次第に急な下りになり,最後は金属製の階段を下りると林道に出た。林道を西(右)に30mほど戻ると道標があり,それに従って南(左)に斜面の段々を下っていく。その先は尾根の西側(右側)のだいぶ急な斜面を巻くように斜めに下っていく道となる。途中,ガレた箇所が何ヶ所かあり,足下に注意しながら進むと,やがて吊り橋を渡り,川沿いを林道に飛び出す。あとは林道を緩やかに登り,ロッジの看板の所を林の中に下っていくと椹島ロッジに無事到着した。(12:10着)
 全行程踏破。終わったら急におなかがすいてきた。缶ジュースと生ビールで乾杯し,食堂でラーメンを頼んだ。久しぶりの食事という感じでおいしい。最終日一気に2,000m以上も下ってきたため,さすがに足の裏が悲鳴を上げている。靴を脱いで足を休めバスを待っていると,利用者が多いので臨時バスが出るというアナウンスがされる。ラッキーと急いで荷物をまとめ,バスに乗り込んだ。
 ここから東海フォレストの送迎マイクロバスに揺られること40分,車を止めてある沼平(ぬまだいら)で途中下車させてもらい,あとは往きと同じ道を自宅に向けマイカーを走らせ,17時過ぎに自宅へ戻った。
 [累積標高差(当日) +208m −2,168m (累計) +5,073m −4,900m]

※コースの( )内は,当日各地点間の所要時間で途中の休憩時間を含む
 なお山名は,国土地理院発行「日本の山岳標高一覧」に記載されている名称(地元で一般的に使われている名)を使用していますので,深田久弥選「日本百名山」の名称とは異なるものがあります。
(例:東岳=悪沢岳,仙丈ヶ岳=仙丈岳)